短時間・単発の就労を内容とする労働契約の下で働く、いわゆる「スポットワーク」の雇用仲介アプリの登録者・利用者数が増加しています。
このような状況を踏まえ、2025年7月、厚生労働省は行政通知「いわゆる『スポットワーク』を利用する労働者の労働条件の確保等について」を発出し、同時に厚生労働省のウェブサイト「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等」にて、「スポットワークの労務管理」と題するリーフレットを公開し、企業に対して注意喚起を行っています。
1.スポットワークの労務管理に関する主な注意点
厚生労働省が通知およびリーフレットで注意喚起している、スポットワークにおける労務管理上の主なポイントは以下のとおりです。
(1)労働契約の成立時期について
雇用仲介アプリに掲載された求人に対して、労働者が応募し、面接等を経ることなく先着順でマッチングされる場合には、応募の時点で労使双方の合意があったものとされ、労働契約が成立していると一般的に考えられます。
(2)休業手当について
労働契約成立後に、会社都合で1日全体の休業や早上がりを命じた場合、それは労働基準法第26条に定める「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当し、労働者に休業手当を支払う必要があります。
(3)賃金および労働時間について
予定よりも早く勤務を開始したり、予定を超えて勤務した場合は、実際の労働時間に基づいて賃金を支払う必要があります。特に、制服への着替えなどの時間についても、労働時間として扱うか否かを慎重に判断する必要があります。
2.スポットワークの賃金台帳調製と労働保険の年度更新処理
厚生労働省の注意喚起に加え、企業が留意すべき点として、労働保険の年度更新におけるスポットワーカーの取扱いがあります。
スポットワーカーは、雇用仲介アプリの運営会社ではなく、実際に労務を提供する企業と直接雇用契約を結んでいるため、当該企業において賃金台帳を作成する必要があります。
また、直接雇用である以上、スポットワーカーも労災保険の対象となる労働者に該当します。このため、労働保険の年度更新の際には、スポットワーカーの賃金も対象労働者の賃金として算入する必要があります。
しかし実務上、スポットワーカーを「一時的な人材」や「外部の人」と捉えてしまい、労働者として正確に管理されていないケースも少なくありません。加えて、スポットワーカー専用の賃金台帳を別途作成している場合、通常の賃金台帳との合算を失念し、労働保険の年度更新時に申告漏れが発生するリスクが高まります。
さらに、労働保険の年度更新を社会保険労務士に委託している場合でも、企業側からスポットワークの活用状況や該当する賃金台帳の存在を共有していなければ、社労士側も申告対象から漏らしてしまう可能性があります。
スポットワークの普及により、企業は多様な働き方に対応する必要がありますが、それに伴って労務管理や法定手続きの正確性も求められています。スポットワーカーも通常の労働者と同様に、労働契約・労働時間・賃金・休業手当・保険制度の対象となるため、年度更新の際にはその存在を確実に把握し、正しく処理することが重要です。
管理部門や社労士との情報共有を徹底し、法令遵守の観点からもスポットワーカーに対する適切な対応を心がけましょう。
記事参考「新日本法規出版株式会社」
<参考リンク>
厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html